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モラトリアム・アパシー(無気力)

モラトリアムとは何か。

モラトリアム(moratorium)とは遅延とか猶予の意味で、支払いや債務を一定期間猶予するなど経済用語として用いられる言葉である。この言葉が心理学や精神医学に使われるようになったのは、米国の精神医学者、エリクソンが「修行や研修中の身である青年期は、社会的責任や義務を果たす期間を猶予される心理社会的な年代である」と位置付けたからである。
青年から大人になるということは、一定期間に許される遊びや自己中心的な生活とは異なり、社会性のある自己・アイデンティティを確立することである。一人前の大人になれば猶予期間を失うと共に社会的責任を負わねばならず、義務を果たすことも迫られる。つまり、心理社会的なモラトリアムとは自分が何であるのか、自分は何を選択し、自分のアイデンティティを確立するのかという概念のことである。

モラトリアムを別の言い方で定義すれば、人が青年期に決着をつけて成人になるための準備期間のことである。モラトリアムという猶予された時期を過ぎた青年は、次に職業を選択し、配偶者を選択し、大人として自分の生き方も選択しなければならない。そして、社会や組織の中で自分がいる場所も手に入れなければならなくなる。ところが、この最終的な選択ができず、モラトリアムに踏ん切りがつかない青年たちが増大しているのだ。
就職によって社会や組織に縛られてしまう事に抵抗して留年を繰り返す大学生、卒業をためらい博士論文を書かない大学院生、会社に入社してもちょっとした逆風に不安になる新入社員、いつまでもお客さま気分が抜けない若い社員などである。
様々な理由によって青年期の猶予期間に結着をつけられず、アイデンディティを確立することもできないままモラトリアム状態を継続する精神病理的な状態をアイデンディティ拡散状態といい、精神医学ではアイデンディティ拡散症候群という。
現在、日本ではアイデンディティ拡散状態のことをモラトリアム状態と呼んでいるのである。

モラトリアム(アイデンディティ拡散症候群)の症状

モラトリアム(アイデンティティ拡散症候群)とは下記のような精神病理の症状がある。

  1. 「自分は…である」という社会的自己(アイデンディティ)の選択を回避し、際限なく決着を回避する心理状態に取りつかれる。
  2. 過剰な自意識にふけり、全能で完全な無限の自分を夢見るので、有限で相対的なすべての現実が自分にはふさわしいものとは思えなくなってしまう。
  3. すべてが一時的、暫定的なものとしてしか体験できない。
  4. 時間的な見通しを見失い、生活全体の緩慢化や無気力化を来たす。
  5. 人と人の密接な関わりを避ける。
  6. いかなる組織にも帰属することを恐れる。
  7. 既存社会に呑み込まれることへの不安が大きい。

モラトリアムの背景

昔はこの精神病理は一定の精神障害が慢性化したために起こる、モラトリアム状態から脱出できない青年たちの徴候であると考えられた。しかし、1960年代以降の精神医学では、これは正常な青年たちが抱くモラトリアムを延長させたいという願望に過ぎないとみなされるようになった。つまり精神障害による精神病理現象ではなく、普遍的な社会的な心理現象として捉えられるようになったのである。

現代社会ではモラトリアムの状態に価値があるとされ、社会自体がモラトリアム化したようにも感じられる。社会や組織に縛られない人々に憧れ、社会人として直面しなければならない事態が起きても当事者意識が希薄になりやすく、お客様のように特別扱いをされる存在でいることを望む心理が一般的に蔓延している。そのため、リスクのある新しいことに挑戦するのは避け、犠牲を払わなくて済むように何事にも当事者にはならない、そのような方法が最良の処世術と考える傾向が強くみられる。

また、最近では経済社会でも非正規の労働形態が増えており、モラトリアムから抜け出す機会が減少している。過酷な受験戦争から解放された大学生は学生生活をモラトリアムとして享受し、次の目標を定めてモラトリアムを終了させようとはせず、無気力な留年を続ける彼らをスチューデントアパシーと呼ぶ。学生だけでなくモラトリアムの真空状態に自分のアイデンティティを見失しなった青年たちに対してはアパシー型青年ともいう。現実には、猶予期間をもてはやすモラトリアムな社会と競争・管理社会の相反する二つ社会構造の中で、それぞれの自我を統合させることが難しくなり破綻がみられるのである。

アパシースチューデントやアパシー型青年に代表されるモラトリアム、又は、アパシーは、精神医学ではアイデンディティ拡散症候群と呼ぶが、精神障害のカテゴリーには入っていない。もしこれが原因で社会的な機能が破綻しているのであれば整心精神医学のカテゴリーに入る。思春期において、引きこもり状態になるなど生活機能の破綻が見られれば思春期失調症候群の一つとして考え、整心精神医学の対象になるが、そこまで大きく社会的機能が破綻していなければ美容精神医学のカテゴリーに入ることになる。

対処・治療について

対処法は基本的には本人が現実の社会の中で自我の統合に目覚めて、アイデンディティを確立するのを待つことである。しかし、本来的にレジリエンス(逆境力)が弱いところに、生活リズムが乱れ不健康な生活を送っていることが精神的に悪影響を与えていることが多いので、どんな状況にも前向きに生きる力をつけられるマインドフルネスレジリエンス療法とレジリエント生活・食事療法が有効であると考えられる。