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美容整心メンタルこころの研究室

身体醜形障害(症)の治療〈その2〉

レジリエント食事・生活療法

Resilient Diet and Life Therapy(RDLT)

私は、長年の身体医学と精神医学の臨床経験と広く学問的知見を深める中で、こころと身体の関係について、独自の心身相関・心身一体(心身一如)の考えを持つに至りました。こころと身体の健康のバランスをとるシステムは、「内分泌代謝系(ホルモン)」、「神経系(中枢・自律神経)」「免疫系」と「こころ」の4つが正四面体構造を成していて、一つは他の3つと影響しあい、他の3つも相互に影響しあうという複雑系の関係にあるから、こころの状態は身体の状態によって決まるともいえるし、身体の状態は心の状態によって決まるともいえます。(美容整心メンタル・AIF研究室の「自律統合性機能」を参照)

またこころの方程式としてP×Cm×Cph×I=D〈Pはパーソナリティ、Cmは精神心理社会的環境、Cphは身体的環境、Iは出来事、Dは精神的あるいは身体的失調〉を述べ、心身の健康はP、C、Iの関数で決まるとし、Cm、Cphに対する働きかけは免疫力を高めるのが良いことを示してきました。(美容整心メンタル・AIF研究室の「心の方程式」を参照)

従って、レジリエントな(逆境力のある)こころを得ようとすれば、こころだけを扱っていても片手落ちで、レジリエントな身体を作ることが大事で、そのためには生活や食事の仕方・習慣がとても重要な役割を果たすと考えています。

現代医学では、心身の健康には、免疫システムが最も重要なキーシステムであることが分かってきた。

免疫系はこれまで、病原性微生物やがん細胞などの非自己に対する生体防御機構として、生体の中で唯一、脳に支配されないシステムだと考ええられてきたが、最近の研究では、免疫系は決して自律的に営まれるのではなく脳の支配やホルモンにも影響されることがわかってきた。また脳と免疫系が互いに情報のやり取りをしていて、脳の機能も免疫系の影響を受けていることが明らかになった。つまり、身体ばかりでなくこころの問題についても免疫系が相互に影響しあうと考えられるようになり、「精神神経免疫学」と言う新しい学問分野が誕生してきている。

「免疫力が高いか低いか、病気になるかならないかは、こころで決まる」とも言えるのである。

免疫細胞(リンパ球)にはT細胞、B細胞、NK細胞などがあり、人の免疫力の70%は腸にあるとされている。腸内細菌の減少はリンパ球を減らし免疫力を下げ、風邪やガン、花粉症などアレルギー性疾患、アトピー、潰瘍性大腸炎などの自己免疫疾患への抵抗力を低下させる。また、腸内細菌の減少は脳内の神経伝達物質のドーパミンを減らし「快の感情」や「やる気」を減退させ、セロトニンを減らし「喜び」や「幸福感」を減退させ「うつ」を招く。すなわち、腸内細菌の減少は免疫力を下げることで、身体の様子をくずし、同時に心の不調をもたらすのである。

脳と腸の自律神経を介しての繋がりは「脳腸相関」と呼ばれる。

免疫力の残りの30パーセントは「笑う」こと、「ポジティブな思考をする」、「他人とのコミュニケーションのある生活」、「規則正しい生活」、「ストレスを避ける」こと、「自然と触れ合い」などのライフスタイルが関与しているとされている。

つまり免疫力を高めるには腸の働きを高める食事や健康的な生活スタイル・習慣が重要なわけである。.

そのためには、1)ストレスをなるべく軽減させる。2)活動と休息のバランスの取れた生活を送るのを基本原則として、交感神経の刺激を抑え、副交感神経を積極的に刺激して免疫力を高めるような生活を送るのがポイントになる。

 

*免疫力とは

免疫力とは、白血球の中のリンパ球を中心とした働きを言う。

白血球は95%が顆粒球とリンパ球で占められており(55‐60%が顆粒球で35-40パーセントがリンパ球)顆粒球は細菌や真菌、古くなって死んだ細胞の死骸などを処理し、2-3日の寿命で活性酸素を放出しながら死亡していく。活性酸素はSODが無毒化するが、処理しきれないと正常細胞を破壊してしまう。リンパ球はT細胞、B細胞、NK細胞がウイルスやガン細胞を攻撃しガンや感染から守っている。最初に攻撃する自然免疫のNK細胞で、その生き残りの異物を迎え撃つのが獲得免疫と言われるT細胞B細胞である。

残りの5パーセントはマクロファージ(貪食細胞)でサイズの大きな異物やサ細胞から出た老廃物を食べて処理する。

白血球も自律神経の支配を受けており、顆粒球は交感神経の、リンパ球は副交感神経の支配を受けているとされる。

ストレスで交感神経が優位になり顆粒球が増加すると、細菌のいるところでは自爆し化膿性の炎症を、いないところでは活性酸素によって組織破壊の炎症を起こす。(胃潰瘍、歯槽膿漏、潰瘍性大腸炎、子宮内膜症、ガンなど)同時に相対的にリンパ球が減るのと、ストレスがステロイドホルモンを分泌させ胸腺を萎縮させT細胞の成熟を妨げ、破壊して免疫機能を低下させるで、総体として免疫力が低下して、感染症にかかりやすくなり、がん細胞を増殖し、ガンを発症しやすくなる。

ストレスが免疫力を低下させることは実験的にも証明されており、こころの状態が良ければ免疫力も高くなる。言いかえれば「免疫力の高い、低いはこころで決まる」とも言えるのである。

心身の失調(病気)の大半は、1)ストレスによる交感神経の緊張→血管は収縮し血流が悪くなる。2)ストレスによる交感神経の緊張→顆粒球の増加で活性酸素が増え組織破壊が起こる→ステロイドホルモンの作用とリンパ球の減少で免疫機能の低下→心身の失調と言うパターンで発症する。

従って心身の失調の回復には、「副交感神経を優位にし、血流を増やし、活性酸素を抑制し、免疫力を上げる。」と言うことになる。

 

副交感神経優位の免疫力を上げる食事・生活習慣

食事療法

食生活・食事療法のキーワードは腸内細菌叢である。人間の腸内には善玉菌と悪玉菌で500種類以上、100兆個以上の細菌が住んでいるが、乳酸菌・ビフィズス菌などの善玉菌が有害な悪玉菌を防御し健康を保っている。

腸内細菌の働きは①食べ物の消化吸収を助ける②リンパ球の腸管免疫システムを刺激し、抗体の産生を促す③常在菌が作る乳酸などで弱酸性にして病原菌を撃退する④肥満を左右する(デブ菌といわれている肥満を招く種類の腸内細菌がある)⑤ビタミンB類、葉酸を産生し、トリプトファン、グルタミンというアミノ酸からドーパミン、セロトニンという脳の神経伝達物質を前駆物質を作る(腸は第二の脳と言われる)など,腸内細菌は生物の原点のようなものであり、腸内細菌が免疫力の70%を握っており、体内の腸内細菌のバランスを正常に保つことが免疫力を高める上でも、心身のバランスを保つうえでもとても大事であることが近年クローズアップされてきている。

従って食事療法は、腸内細菌を育てるような食事をとることが基本となります。

 

a).プレバイオティクスー善玉腸内細菌を育てるエサになるようなものを食べる

1)植物繊維-NK細胞活性の低下を抑えるビフィズス菌のえさになる
不溶性のものは消化されず糞便の量を増やし蠕動運動を刺激し便通を促進させる。穀類、豆、野菜
水溶性のものは、昆布、わかめなどねばねば系と里芋、豆、果物
植物繊維は、ストレス下で増えるコルチゾールがNK細胞活性を下げるのを防ぐことから、「生きる力」が増強され、自殺率を下げるという報告がある。

2)オリゴ糖-難消化性オリゴ糖はビフィズス菌を急増殖させる
フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、乳果オリゴ糖

3)糖アルコールー善玉菌のエサになり、乳酸菌が乳酸発酵し、環境を酸性にして悪玉菌の増殖を抑える。
キシリトール‐イチゴ、カリフラワー、キノコ、
ソルビトール―林檎、梨
マンニトールー昆布

 

b).プロバイオティクスー腸内環境を、生きた微生物で整える(生きて腸に届く乳酸菌)
乳酸菌シロタ株(ヤクルト)が代表的

 

c).バイオジェニックスーそれ自体が身体に直接的な効果あるあるもの

ヨーグルト―現在、アトピー、美肌効果(LGG菌,KW乳酸菌)、ピロリ菌対策(LG21,LC1)、整腸効果(ビフィズス菌、LG-21)、カゼ・インフルエンザ対策(R-1乳酸菌)など特定の機能をうたうヨーグルトが各社から多種類販売されているが、自分が期待する効能でまず選び、毎日200gを1週間続けてのみ、何らかの効果の実感が伴うか相性をみて決めるのが良いであろう。

 

d).免疫力を高める食品

①玄米食②豆類、ゴマ、小魚、小エビ③ぬかずけ、納豆など発酵食品、④腸の動きを活性化し副交感神経を刺激して免疫力を上げるものーⅰ)植物繊維(キノコ、海藻類)ⅱ)酸味、苦み、辛みのあるもの-排泄しようと刺激する(梅干し、酢、ワサビ、ニンニク、ネギ、唐辛子、ショウガ、レモン、ニガウリ)ⅲ)常温の白湯お茶

 

e).抗酸化食品

βカロチン(人参、カボチャ、ほうれん草、ブロッコリー、ピーマン、モロヘイヤ)
ビタミンC,(イチゴ、キウイ、レモン、アロセナ、バナナ、)
ビタミンE,(ナッツ類、鰻、ニジマス、ひまわり油)
ファイトケミカル
アントシアニン(赤ワイン、ブルーベリー)リコピン(トマト、スイカ)カテキン(緑茶、紅茶)イソフラボン(大豆)

 

抗酸化食品はSODの活性酸素消去作用によるものだが、細胞損傷を与える悪玉活性酸素(ヒドロキシラジカルなど)だけではなく生命維持に貢献する善玉活性酸素(スーパーオキシドなど)も一緒に消去してしまう欠点がある。

ヒドロキシラディカルのみを還元するサプリメントがあれば有効であろうと考えている。

食べ物、飲み物は、原則、冷たいものは避けるよく噛んで味わうようにすると副交感神経が刺激される。

 

生活療法

1.入浴―体温+4℃のお風呂にゆっくり、身体の芯まで温まる―(体温が上がるとリンパ球数が増え、免疫力が高くなる)

2.呼吸―時々鼻で腹式深呼吸をする。特に呼気はゆっくりと吐く
吸気は交感神経、呼気は副交感神経支配であるから、息を吐く時はお腹の底からゆっくりと吐く

3.笑う―馬鹿笑いをする(無理な笑いでも脳が間違えてドーパミンを出しNK細胞を活性化させる)
お笑い番組、コメディなど笑えるものはどんどん見る。気持ちは無くとも笑い顔を作るだけでも効果はある

4.軽い運動ー息が切れないように有酸素運動をおこなう
ラジオ体操、散歩、ストレッチ

5.睡眠―枕を低めに、あおむけで寝る(睡眠不足は免疫力を下げる)

6.規則正しい生活(昼夜逆転など不規則な生活は顆粒球を増化させリンパ球を減少させ免疫力を低下させる)

7.「こころの持ち方、考え方」で免疫力は左右される。

感謝・幸福感・喜び・安堵・慈しみ・謙虚さ・希望などのポジティブな感情・思考は副交感神経を優位にしてリンパ球を増やし免疫力を高めます。

怒り・不安・おびえ・恨み・傲慢さ・絶望の気持ちなどネガティブな感情・思考は交感神経の緊張をもたらしリンパ球を減らし免疫力を下げます。

性格でも免疫力にはっきり違いが出る。はっきりしているのは楽天的な方が免疫力は高く、「くよくよせず明るくポジティブな楽観的な性格」が免疫力を高めるのに極めて重要であるということである。

8.「自律神経」で免疫力はコントロールされる

自律神経と免疫力との関係では、一般的に、穏やかな、のんびり屋の性格で副交感神経優位の体質な人は、リンパ球は多くNK細胞の殺傷能力は高まり免疫力は上がります。気迫のある怒りっぽい、頑張り屋の交感神経優位の体質な人はリンパ球は少なく、免疫力は低下します。

メリハリのないゆる過ぎる生活を送っていて、副交感神経優位になり過ぎてリンパ球過剰体質になってしまうと、免疫システムが過剰になってしまい、アレルギー反応を起こし易くなり、アトピー性皮膚炎、気管支ぜんそく、花粉症などアレルギー疾患が発症し易くなると言われている。

逆に副交感神経が抑えられると、臓器の排泄分泌能力が低下し、胆石、腎臓結石、魚の目などが出来、さらに低下するとガン細胞を破壊するパーフォリンやグランザイムと呼ばれる物質がリンパ球から分泌されなくなりってしまい、リンパ球自体も減少し、ガン細胞を撃退できなくなりガンを発病しやすくなる。

つまり自律神経は「どちらに偏っても健康を害する」と言うことであり、大事なのは交感神経と副交感神経のバランスが取れていることであるが、副交感神経優位のバランスが望ましいことになる。

 

私たちは自律神経でこころと身体は繋がっている。そして宇宙と繋がっている。

人は宇宙の自然の摂理の中で生きてる(生かされている)存在であるから、自律神経は自然の変遷に連動し、身体も心もまたその支配から自由ではないのだ。自律神経は、季節、潮の満ち引き(月の引力)、気圧、湿度、太陽の光量、気温、などで影響を受ける。気温の高い夏はゆったりモードの副交感神経が優位になり、冬は基礎代謝を上げようと交感神経が優位になる。天気の良い日は、高気圧で空気が濃いので血中酸素も増え交感神経優位になり元気になるし、逆に低気圧では酸素がうすく除脈になり、副交感神経優位になり気分もネガティブになります。

私たちは、自分のこころや体調も自然界の揺さぶりに大きく影響されているのである。

つまりは私たちの存在は自然界の一部なのであり、自然現象の一部でもあることを知っておくことは、自分のこころが後悔にさいなまされたり、不安におののく時は、こころに落ち着きを取り戻すきっかけにはなるだろう。

美容整心精神医学が目指すこころの回復には、心身両面からのアプローチが必要で、身体的には免疫力の強いレジリエントな健康体を作ることを目標にしている。

一言でいえば、出来るだけストレスを軽減させ、楽天的かつレジリエントな気持ちで暮らす、副交感神経優位の体質を作り免疫力を上げる、ことに尽きるものである。これらは相互に関係し、またレジリエントなこころ作るマインドフルネスレジリエンス療法とも関連し同時並行的に行われてこそ効果を発揮する。しかし、総論的な概念を外さなければ、あとは各人がアレンジして行えばようと思う。たまには分厚いサーロインステーキを食べてもいいし、ハメを外してもいいのである。何事も義務化してしまい、それが苦痛を伴うストレスになってしまうようであれば、何にもならないと思うからである