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美容整心メンタルこころの研究室

身体醜形障害(症)⑥-HSPの社会生活で陥り易い「困ったこと」の具体的対処法Ⓑ

4.職場でまわりの目が気にかかる

HSPは誰もいない場所で、一人で黙々と仕事をするのは得意だが、神経が過敏なこともあって、職場では音や人の気配、話し声が気になって集中できないことが多く、誰かに自分の仕事ぶりを見られていると意識すると必要以上に緊張してしまう。その結果本来の力が発揮できないことが多い。

外部からの刺激を遮断する工夫をする。パーテーションなどで物理的に安心できる空間を作り、耳栓やイヤーフォンで音楽を聞き音を遮断する。
それらが出来ない時は、他人との境界線を強くする前記カプセル化を用いたり、「人見知り」への対策である神経の高ぶりを抑える方法を用いるのが良いだろう。


5.小さなミスにも激しく動揺する

小さなミスをしただけで激しく動転してしまいパニック状態になってしまい、自分を全否定して落ち込んでしまうのもHSPに良く見られるパターンである。

その場合は、ストレスを最小化するための「心を静めるテクニック」を用いて気持ちを静める。まずは深呼吸(腹式呼吸)をして心を静める(呼吸コントロール法)が、それだけでは静められなかったら、トイレにでも駆け込んで、目をつむって、完全に安心出来て、心地よく、幸せな気分になれる場所をイメージし、それに浸ってリラックスす(ポジティブイメージ法)る。また不安を増幅させる侵入思考が出現したら、心理ゲームなどで感情のコントロールを取り戻す(フォーカシング・テクニック)ことが有効である。
すこし落ち着いたら、そのようなパニックを繰り替えさないために、それを引き起こす非生産的な思考を抑え込むリアルタイムレジリエンス(最初に浮かんだ思考よりも状況を正確に説明する方法を一つだけ見つけること)で予防するようにする。
リアルタイムレジリエンスは、3つの決めことで思考への反論を組み立てるとよい。

ⅰ)代替思考<もっと正確な見方をすると・・・>

ⅱ)証拠<それは正しくない。なぜなら・・・>

ⅲ)結果の予測<最もありそうな結果は…そしてその結果に対処するために・・・することができる>


6.ミスが怖くて仕事に時間がかかる

小さなミスを恐れる余りに何度もチェックして仕事に時間がかかってしまう。そこまでしなくともいいことは分かっていても確認せずにおられないのがHSPである。

これはいわゆる強迫症状であり、それに対しては不安な状態に徐々に暴露させていく系統的脱感作に近い方法で完璧さへのこだわりを減らしていく。
「チェックは3回まで」と自分できっぱりと決めて、それ以上は絶対にしないようにし「ミスしたところで首になるわけでもないし、死ぬわけではない」と言い聞かせ不安に立ち向かうのだ。
またチェックリストを事前に作っておき、チェックを1回で済ませるのも良いだろう。


7.一度に複数のことができない

HSPでは、一度に多くのことをやらなければならない状況になると、頭が混乱してどこから手を付けて良いか分からなくなり、大きなストレスを感じパニック状態になる人がいる。

複数の仕事をこなさなければならない時は、優先順位をつけて、その順位に従って片づけるようにするのが良い。
優先順位は「重要さ」と「緊急度」の二つで分類し、重要かつ緊急の仕事を一番に、重要でも緊急でもない者は最後にし、さらに重要ではないが緊急なものを2番目に、重要だが緊急ではないものを3番目に行うようにすれば徒に焦ってパニックに陥ることは避けられる。


8.人ごみで疲労困憊する

騒音、ネオンや広告など視覚的な刺激、様々な匂い、人いきれ、など五感への刺激があふれる雑踏は敏感な感覚のHSPには刺激、ストレスが強過ぎ自律神経のバランスが崩れ自律神経失調症のような様々な心身症状が出ることは稀ではない。
全身的には易疲労感、倦怠感、発汗、震え、微熱など、局所的には頭痛、まぶたの痙攣、耳鳴り、喉の違和感、動悸、息切れ、立ちくらみ、しびれ、呼吸困難、胃部不快感、吐き気、冷や汗、皮膚のかゆみ、頻尿、筋肉の張り、コリ、痛みなどありとあらゆる症状が出、ストレスで免疫力も低下し風邪などひきやすくなる。

対策としては、まずなるべく人ごみは避けるに越したことはないが、やむをえず出かけなければならない時は、「お守り」を身につけて、「これが自分を守ってくれる」と暗示をかける、また自分の周りに境界線を張り巡らすようにカプセルに入った自分をイメージして(カプセル化)自分を守るようにするのが有効。
あるいはラグビーの五郎丸選手のように「ルーティン」を決めておき、雑踏に出る前にそれを行うようにすると安心感が得られるようになる。

*HSPの陥り易い困ったこととは、いずれもストレス耐性が弱いことによって、つまりはレジリエンスが弱いことによって発生する一種の逆境であり、その心理的なダイナミズムはレジリエンス心理学が良く説明するものである。
また実際にHSPは身体醜形障害(症)の殆どの人に共通して見られる気質でもあることから、私のマインドフルネスレジリエンス療法MBRTの基本的な考え方がHSPにも適応されると考えている。

HSPの「陥り易い社会生活で困ったこと」に対してMBRTの観点から見ると、即時的には、心がコントロール不能になった時は「心を静めるスキル」と、侵入思考に惑わされた時には意識を集中させる「フォーカシングスキル」が適応になる。長期的には、HSPの非生産的思考に打ち勝つ「リアルタイム・レジリエンス」が役に立つと考えている。

⇒『身体醜形障害(症)研究⑦-HSPと整心精神医学とレジリエンスとマインドフルネスの関係』へ