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レジリエンス心理学①‐レジリエンスとは何か?

「レジリエンス、レジリアンスresilience」という言葉が広まってきた。一般社会では、「レジリエンスで逆境を乗り越え成功に導く」とか「へこんでも折れないレジリエンス思考」など、いわば昨今のアドラー心理学やポジティブ心理学などと同じように啓発本の原典としての登場である。

レジリエンスはいまだに明確な定義がなされてはいないようだが、本来は物理学用語で、ストレスに対する反対用語であった。ストレスは圧力・応力の意味であり、力によって歪む状態をイメージする。レジリエンスはそれに抗する力で、ゆがんだ形を元に戻すことイメージした回復力・復元力の意味である。

精神医学への登場は、1960年頃、心理学者ウェルナーが、同じような脆弱劣悪な幼児環境に育だった子供たち600名の長期の成長観察をし、3分の2は、おそらくと予想した通りに、うまく社会適応できずに成長したにもかかわらず、3分の1は、きちんと成長し社会的に適応して生きているのが分かり、その差は個体の持っているレジリエンスの力の差である、としたのが始まりとされている。
大まかにいえば、レジリエンスとは、同じ状況にあっても逆境に陥りにくい、また陥ったとしても、そこから回復、再起する力のことを言う。つまり、こころの要素,因子であり、かつこころの動的な過程を意味する。
その力を研究するのがレジリエンス心理学といって良いであろう。

Ⅰ.レジリエンスとは何か?

精神疾患の理論モデルとして、そして定義
精神医学の領域で1980年以降これまで力を持ってきた精神疾患理解のための理論モデルは3つである。
1.脆弱性モデル:発病促進的に作用する生物学的な基礎を持脆弱性を想定するもの。
2.ストレスモデル:病院が特定のストレスに一義的に決定されると考える。
3.生物心理社会モデル:脆弱性を持つ生物学的な要因と心理的要因、ストレスを含む患 者の社会的要因の総合作用によって病態の把握を目指す統合的なモデル
上記3つが病因論的な立場からのモデルであるが、病気の予防、治療論的な立場からの疾患モデルとしてレジリアンスモデルがある。
4.レジリアンスモデル:ここでは病因を単純な因果論的な見方から離れ、一義的に特定する立場を取らず、個人を心身複合体と捉え、発病の誘因となる出来事・心理社会的な要因、身体・生物学的な要因ひいては病気そのものに対し、抗し跳ね返し克服する心身複合体としての個人に備わる復元力あるいは回復力(レジリエンス)を重視・尊重し発病予防、回復過程を説明するものである。

ウエルナーの研究に端を発し、1970年ころより欧米では、環境に恵まれない、トラウマを持った子供たちをいかに逆境を乗り越えられるように導けるかの戦略上、レジリエンスの用語が登場するようになって来た。

「レジリエンスresilience」は、オックスフォード英語辞典では、「跳ね返る、跳ね返す」という意味から「圧縮された形を元の形に戻す力、柔軟性」に変わってきた。
「ストレスstress」はその反対用語で、「外力による歪み」をいう。レジリアンスは「外力による歪みを跳ね返す力」ということになる。
精神医学における「レジリアンス」はストレスと同様に物理学の概念からの転用で、「病気に陥りさせるような困難な状況、ひいては病気そのものを跳ね返す復元力、回復力」の意味でつかわれている。
そのような意味合いのレジリアンスという述語を整理すると、Ⅰ)防御因子、回復因子の因子として。また、2)防御、回復に向けた動的過程の二つの意味がある。
1) 因子として
防御因子、回復因子は①生物学的次元とパーソナリティの次元からなる個人特性のものと、②家族、社会など集団特性のものに大別されるが、現在までの研究はパーソナリティ特性の防御因子の研究が多い。
パーソリティ特性における防御因子に関わるレジリエンスはエゴ・レジリエンスと呼ばれる。例えば「他人と良好な関係を結べる力がある」ことは、パーソナリティ特性におけるエゴ・レジリアンスであるが、これは脆弱性の反対に位置するので、そのパーソナリティ特性は非脆弱性と言える。このような使い方のレジリエンスは、因子の意味合いを強調して、「レジリアンシー」と呼ぶ人もいる。
2)動的過程として:
レジリエンスとは、脆弱性、ストレスを包摂する概念で人間が侵襲をこうむるという受動的な状態に置かれた局面で、これを乗り越え、新たな心身複合体としての主体を生み出す能動的な振る舞いの過程を指す。困難な状況、病気に対する跳ね返しの回復の力動過程は、明らかに不都合な状況において、ポジティブな適応をもたらす力動的過程ともいえる。
この類似概念としては、①認知行動論の「対処行動(コーピング)、②宮本忠雄の「自己治癒力」③脳神経学の「可塑性plasticity」などがある。
ラボリはレジリエンスを[侵襲後の振動反応のシステム]として捉え、八木はネオヒポクラティズムとして先取りし、「疾病抵抗性」「抗病力」と訳し、防衛・回復に向けた力動過程の要素と、防衛・回復因子としての両方を含ませている。
レジリエンスは子供時代の外的世界と内的世界の要素の複雑な相互作用であり、出生時の劣悪な環境による低体重出産、幼少時の貧困、両親の離婚、身体的虐待など早期の外敵要因は過去の出来事であって覆すことは出来ない。しかし低いレジリアンスの内的要因は、思考スタイルのように修正、もしくは対抗することさえ出来るものもある。
そしてレジリエンス心理学で重要なのは、一度思考スタイルが変われば、コントロール外にある幼少期の出来事に起因し、現在まで引き続いているネガティブな影響を無効にできる、ということである。