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美容整心メンタルこころの研究室

新しい「ヒトの存在と心の構造モデル」ー量子論が教えてくれたことから

今年のノーベル物理学賞は、昨年ヒッグス粒子の存在が確認されたこともあって、その存在を予測したP.Higgs,とF.Englertに贈られましたが、これにより量子論の標準理論はほぼ完全に証明されたことになり、量子論はアインシュタインの思いに反して、ますます科学的正当性を得て来ています。

その量子論によれば、素粒子(しては物質)は粒子であると同時に波動であるとされ、その性質はシュレディンガーの波動関数で示され、その位置は確率的にしか(つまり曖昧にしか)予測できず、しかもA点にいる時とB,C点にいる時が確率的に決まっているとは言うものの、観測するまでは何も決まっておらず、それらは同時に重ね合わさっている状態であると説明される。

そして、人が観察した時に波の性質が壊れ,粒子になるが、その場所はサイコロを振るような偶然性で位置が決まる(波動関数が崩壊し、収縮するという)とされ、それは瞬時に起きる(時間ゼロ)ため、相対性理論からは、あってはならない光速を越える伝播現象が発生することになる。

ここでニュートン力学以来の決定論的自然観は崩れ、いわゆる因果律は成り立たなくなる。

自然には確かなものは何もない、すべてがあいまいで、本質的に不確かであるというテーゼとなり、それはハイゼルベルグの不確定性原理として証明されたのである。

量子論は物質や自然がただ一つの状態に決まらず非常に曖昧であることを、そしていい加減さこそが自然の本質であることを私達に示した。

さて、歴史を振り返ると、(これは私の独断ですが、)人類は精神を持ってから、生命の誕生や宇宙の誕生を始め、自分達のレベルの知識や論理性では説明できない事は、神の力によるものとして神話の世界を作りあげて生きてきた。

これは、人種を越えて等しく行われてきた思考、生活様式であった。

ところが哲学から自然科学が生まれ、急速に進歩しニュートンの物理学(古典物理学)が完成すると、決定論的、因果律的自然観が生じ、もはや人類に予測出来ないことは何もない、自然は意のままに操作でき、征服したかのような過信が生じ、神の価値は貶められた。

ところが19世紀末にプランクのエネルギー量子仮説、アインシュタインの光量子仮説が出現し、量子論の黎明期からボーアの原子構造量子論、ド・ブロイの物質波、ハイゼルブルグの不確定性原理と量子論が発達して来て、20世紀に入ると決定論的、因果律的世界観が崩れ、量子論的な不確実、不安定な世界観が無意識の内にも蔓延した。

しかし一度捨ててしまった神の威信は簡単には復活できず、それに代わる、何か「超越的な存在」を求めるようになり、それが現代人の方向性を失った不安定感の根源になっているではないかと思える。

そして現在のspiritualなものの流行に繋がっているのではないかと思う。

ひるがえって、では自然は、量子論が教えるように本当に無秩序で曖昧であろうか?地球の自転、公転は極めて正確であり、それによって地球上の生命は維持されている。

元来、宇宙(コスモスcosmos)は、混とん(カオスchaos)の反対語であり、秩序や調和を意味している。

我々の社会、文明も争いは絶えないものの、基本的にはスパイラルを描く様に進化してきているように思える。

我々の生命、身体も自律的に恒常性を保っている。

私は人間の存在を含めた宇宙は、量子論の示した曖昧さ、不確実性だけではなく、その中心に自然の規律を統制する何ものかがあり、アインシュタインはそれを指して、未知の変数と言ったと思うが、私は、それを絶対的超越者としての、「霊性」spiritualityとしたいと思う。

その意味するところは「自然を超越した存在』としてのある種の神であるが、それは「あらゆる自然現象を貫き決定する究極の原理、真理』を意味するスピノザの神である。

一方、心、精神の構造やメカニズムも研究されフロイトから始まり発達した自我心理学、ユング心理学、コフートの自己心理学など多くの心理学的な理論や発達論の進歩がみられている。最近ではそれらではあまり触れられなかった、情緒的な感覚としての「生の意味」、「生きる価値」、「自尊心」などを“霊性spirituality“として自我や,自己と別な領域としてとらえる考えがある。

私はこころ、意識は脳(物質)に存在し、神経細胞網の物理的な作用によって生じるという考えには、基本的には反対しないが、その作用のあり方、自我や自己の心の機能をコントロールする機能が、現在の知識レベルでは全く予測もつかないシステムとして存在し、(それは上位の霊性につながるものとし)、またそれは身体的健康のコントロール機能としても関与し、かつ、その霊性は外界宇宙の中心である「霊性」につながるものとしたモデルを考えた。

そして「霊性」の実際的な機能として自律的統合性(機能)autonomous integrity (function)AIFを想定し、身体、自我、エス、自己、超自我、霊性の各々の領域における役割、作用を複雑系システムとして調整を行い、総体として健康的な生の維持、向上を図るものと定義した。(ここでいう健康の定義は1998年にWHOが提案した,健康に身体的、精神的に加え、霊的な要素を含めた定義である。)

当初はこの機能を自律機能autonomous functionとし、このホームページのタイトルにもなっているが、自我心理学のハルトマンの自我自律機能と混同しやすいので名前を変えようと思う。(図1,2)

図1ヒトの存在と心の構造モデル(preliminary)。

図2.心の構造とAIFの機能モデル(preliminary)

 

 

 

 

 

 

そして身体的、精神的な障害は基本的にこの自律的統合性AIFの失調によって起きるとの説を提示する。

そして障害の様態を、AIFや量子論で説明し、それらの予防と治療に繋げていきたいと考えている。