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レジリエント心理学⑩A:スキルⅣ.「思い込みに挑む」スキルーその1

「自己変革スキル」

スキルⅣ.「思い込みに挑む」スキル

逆境が襲った時に、人は一般的に予測できる範囲で反応することが研究結果で出ている。例えば問題と向き合うとき、人は一般に自分自身に対して「なぜ」と問題の原因に関係する問いを発する。「それはなぜ起きたのだろう?「それは私のせいだったのだろうか?」「私がこれをコントロールしていいのだろうか?」これらの問いは自然なものであり,その答えは、私たちの「なぜ」思考であり、直面する逆境の原因に対する考え方である。

  1. 逆境が襲ったとき、なぜ人は『なぜ』と問うのか?

失敗や予想外の結果は「なぜ」思考を引き起こすが、成功や予期された結果「なぜ」思考を引き起こさない。これはネガティブな結果を解決する方が人類の進化に有益だったためだろう。

逆境の真の原因を特定するのが早ければ早いほど解決策も早く生み出すことが出来る。実際にはティッカーテープ思考で、瞬時に原因を特定するように精神は発達しているが、しかし「思考のワナ」で見た通り、精神的な近道(ヒューリスティックまたは経験則)によって時折過ちを犯すことがある。結果的に誤った原因を特定し、誤った解決策を求めてしまうことになる。

 

  1. 「思い込みに挑む」スキルの7つのステップ

  自分の思い込みに挑むことで、自分の問題を明確化し、問題に対してより良い、もっと永続的な解決策を見つけることが出来る。

それを7つのステップで行ってみよう。

ステップ1.逆境をABCで分析する

どのような問題の徹底分析でも、レジリエンスのための最初のステップはABC分析である。現在進行形の、しばらくあなたが葛藤している逆境を一つ選んでみよう。良くても一時しのぎの解決法を持っている、最悪の場合は無力感と絶望に陥るような逆境だ。

ABC分析で学んだように、まず自分の問題Aを客観的に,冷静に、ただ誰が、何が、いつ、どこで、に注目して事実だけを書く。ここでは客観的説明から「なぜ」の問いを除外するのが大事だ。

次にあなたに逆境が生じた時のことを思い出してみよう。そして。逆境を経験した時にあなたの頭を駆け巡ったティッカーテープ思考について思い出してワークシートの「思考」欄に書き留めてみよう。

最後にこの出来事がもたらした反応、感情と行動の結果を書こう。

Bティッカーテープ思考は異なる種類の思考から成り立っている。感情の状態に対する認識を述べたもの、や「なぜ」思考、「次は何」思考が混在している。

 

  • ABCワークシート

                                        

 

逆境:

 

 

 

ティッカーテープ思考:

 

 

 

結果:

感情:

 

 

行動:

 

 

 

ステップ2.原因を円グラフにする

思い込みに挑むスキルの2番目のステップでは、あなたの「なぜ」思考と、それが問題解決にどのように影響するかを理解する手助けをしてくれる。

ティッカーテープ思考の中で「なぜ」思考を切り離して、それが原因思考または説明になっているか確認しよう。ここで必要なものは、特に原因についての考想であるので、説明でもなく「次は何」思考でもない「なぜ」思考を突き止めるのが大事である。人によっては「なぜ」思考が含まれないことがあるが、そのような場合は何が問題を引き起こしたのかストレートに自分自身に問うてみて、最初に思い浮かんだ「なぜ」思考を記録して、最初の「なぜ」思考として使ってみよう。

人はいくつかの原因思考の中でどれが最たる理由か、瞬間的に決定しているものだ。

特定された個々の原因がどれだけ問題に影響しているか評価し、それを円グラフに表してみよう。

その際、自分で変えられる可能性のあるものに印をつけてみよう。

それが、人が、逆境に対して最初どう応じるかが、問題をどう解決し始めるのか、問題解決の道筋を素早く決定することになる。

しかし、状況の問題の本当の原因を特定できていないかもしれないと自覚することは、あなたが衝動的に行動しないための抑止力になる。なぜなら、自分の説明スタイルが、トンネル視や拡大化・極小化のように可能性のあるいくつかの原因に導くかもしれないが、それは体系的に他の原因を除去してしまうことがあるからだ。

説明スタイルは、直面する問題の認識の仕方や遂行すべき解決策を選択する際に影響する。

 

  • 「なぜ」思考の比率

 

<例>

逆境のときの「なぜ」思考とは、最初に考えた原因である

その瞬間に、自分が問題をどうとらえたのか。逆境に対する原因がどれくらいの比率を占めたのかを円グラフに示してみよう。合計して100%になるはずだ。

それぞれの原因が、(1)変えられるもの、(2)やや変えられるもの、(3)かなり変えられるもの、いずれであるかを決めること。

1から3の順に、円グラフに比率を入れてみよう。

 

 

1.             %

 

2.             %

 

3.             %

「逆境の原因」と、それらの原因が

どれくらい変えられるのかについて

の自分の直感が、どの解決策を即座

に求めるのかを決定づける。

 

 

 

 

ステップ3.自分の説明スタイルで特定してみよう

説明スタイルとは、逆境に対する学習された反応であり、私たちが経験する問題に対する既存の説明のパターンである説明スタイルは3つの側面から示される。「自分vs自分ではない」「いつもvsいつもではない」「すべてvsすべではない」の3つである。

説明スタイルは問題解決の可能性を制限してしまう。説明スタイルは逆境の真の原因の一部に注意を引きつけてしまうので、可能性のある解決策の一部しか試せなくなるのだ。問題を解決するのに自分の説明スタイルがどのように障害になるのかを詳細に描くことが必要になる。3つの側面を使って練習すれば、その過程で自分自身の説明スタイルを解釈できるようになる。

自分vs自分でない

何かの逆境に陥ったとき、自分のせいで起きたと思うか、自分以外の他の人々や状況のせいで起きたと思うだろうか。

「自分ではない、いつもではない、すべてではない」思考の人は、「自分、いつも、すべて」の思考を認めるのに障害になる。自分の説明スタイルが、客観的な真実に対して、かなりの度合いで判断力を奪う事実を認識する必要がある

あなたが自分の思考スタイルが「自分」か「自分ではない」なのか認識していることは大事なことである。

 

いつもvsいつもではない

あなたが特定した原因は長い間存在するものなのだろうか、それと一時的なものだろうか?

それは、「自分」の側面説明であっても、「いつも、いつもではない」の側面によって変わることに留意しよう。

 

すべてvs すべてではない

この説明スタイルの側面は、あなたが、特定の問題の原因が、自分の人生における多くの領域か、またはほんのわずかな領域に影響すると考える度合いについて評価するというものだ。

自分のティカーテープ思考の「なぜ」思考は、自分の職業人生、結婚、友人との関係性といった人生の多種多様な領域が影響を受けると示唆しているだろうか?(ある出来事からすべてのことに一般化するか)あるいは主として具体的な影響を思い描くだけであろうか?

「自分」「いつも」の側面を持つ思考でも「すべて」「すべてではない」両方の思考になりうる。

自分の説明スタイルを理解する事は重要である。逆境が襲ってきたとき、自分が生み出す「原因となる考え方」は、この説明スタイルを反映したものになってくるからだ。

自分の説明スタイルによって、問題の原因について幅広く把握することが妨げられ、レジリエントに反応する能力が制限されてしまっていることがある。

 

説明スタイルをコード化する

B思考の3つの側面について1から7までの尺度を使って点数化して明示化する。最も強い「自分」「いつも」「すべて」思考を1とし、もっとも強い「自分でない」「いつもではない」「すべてではない」を7とする。

■「なぜ」思考#1:「上司は私の私生活を尊重してくれない」

                                         

■「なぜ」思考#2:「フェリシアは私に期待しすぎる」

                                         

 

 

 

この例では、「自分ではない」「いつも」「すべて」の思考である。

この例の人は、他の出来事でもおそらく同じパターンの説明スタイルをとるだろうと予測される。

 

あなたの説明スタイルは何だろうか?

先に書いた円グラフから自分の説明スタイルを数値化してみよう。

仕事の場と私生活の場では全く異なる説明スタイルを見せる人もいるから、

自分の説明スタイルを客観化し公平化を図るためには、最低でも10のネガティブな出来事について数値化してみる必要がある。

尺度がすべて4であれば、問題に直面したとき、自分自身の責任と、他人の責任をきちんと半々にするという説明スタイルなのだ。自分自身を責める傾向や他人を責める傾向が一つの説明スタイルであるように、それも一つの説明スタイルなのだ。

 

 

 

 

                                         

  • あなたの説明スタイルは?

 

円グラフにある「なぜ」思考について、次の3つの説明スタイルに従って評価してみよう。それぞれの思考に対する、それぞれの側面を点数化して書き込んでみよう。

この演習を通して、逆境に対する自分自身の説明に関する図表と、自分の説明スタイルを写した「スナップ写真」ができる。

次の尺度を使ってみよう。

 

 

                                         

 

 

 

 

自分の評価を書き込んでみよう。

自分/自分ではない    いつも/いつもではない   すべて/すべてではない

                                        

 

思考1

                                        

 

思考2

                                        

 

思考3

                                        

 

正しい説明スタイルとは何か?

正しい説明スタイルとは何か?という質問への答えは「異なる説明スタイルにはそれぞれに独自の利点と欠点があるものの、どのようなスタイルであれ可能性を制限するものだ」ということだ。

セリグマンは、人びとがコントロールの及ばない逆境を経験した時、即座に無力になり、その後は、コントロールが出来る逆境でも無力になる理由を解明した。

誰が無力になり、誰がレジリエントであったかを決めた重要な要因は、そのような逆境の類であったかではなく、人々がその逆境をどのように説明したかであった。

レジリエンスと無力感の違いは説明スタイルだった。

悲観主義者は、つまり「自分、いつも、すべて」の説明スタイルの人は無力感と抑うつに陥る傾向があり、楽観主義者、「自分ではない、いつもではない、すべてではない」スタイルの人はレジリエントで抑うつとは無関係のままでい続けた。

それは社会的に実証された。悲観的な生命保険外交員は成績も悪く離職率も高かった。悲観主義者は楽観主義者に比べ大学での成績も悪かった。楽観的なスポオーツ選手は敗北しても素早く立ち直り、より優れたパフォーマンスを見せたが、悲観的なチームメイトのパフォ―マンスは悪化した。こうして心理学の分野では楽観主義が良いものだという憶測が広まったが、最近は極端な楽観主義者は少しばかりの楽観主義者に比べ大学の成績が悪いことが判明した。

心理学者たちは、柔軟になること、つまり平素の自然な説明スタイルの殻をぶち壊すことが重要だと理解した。そして現実的になる、つまり直面する逆境の原因を的確にピンポイントで指摘する必要があるとした。