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レジリエンス心理学⑥―レジリエンスの土台となる基本哲学

 

自分の行動をコントロールして人生を広く豊かなものにするレジリエンスを高める7つのスキルの基盤となった哲学を見てみよう。4つの原則から成り立っている。

  1. 人生は変えられる

ホッブスの合理主義哲学は、人類に対して否定的で、「人間とは本来利己的で、人の人生は野蛮で短い。性格は生まれつき決められており後天的に変えることは出来ない」とした。その影響を受けたフロイトは、「人は5歳までに人格の大部分は出来上がり、長年にわたる精神療法は多少の効果はあるが、人間は自分一人で変わることは不可能である。」とした。ポストフロイト派は、ジョン・ロックとジャン・ジャック・ルソーの経験主義に基づき、「人間は「白紙」の状態で生まれてくるのであって、生来の利己心や強欲さはなく、生後の経験によって形成された刻印が打たれるのを待つまっさらな状態である」とし、彼らは「学習が私たちの人間性や行動を形成するのと同様に、過去を乗り越えるために新しい学びを方向づけることもできる。」と結論を出した。一度学んだ知識は捨て去ることが出来るのだ。

学習によって人は変わることが出来るとしたロックとルソーの信奉者たちは、フロイトの非科学性についても非難した。心理学が科学的であるためには、観察可能な変数を一つづつ系統的に変えて結果を観察するという実験を経ていることが必要であるが、フロイトの精神分析は、葛藤を実験的に変数として操作できないこと、無意識なエゴの防衛は観察できないから彼の理論はすべて科学的ではないとした。唯一観察可能なものは行動だけであるとして「行動主義」を提唱し、やがて実験心理学が台頭し、ワトソンを筆頭に、心理学から感情や精神状態、心についての言及はすべて排除された。

しかし、やがて行動の原動力は思考や感情であるから、レジリエンスを含め人間の理解には思考や感情の研究も重要であるという意見が1960年代には高まってきた。

  • 思考がレジリエンスを引き上げる

アーロン・ベックは精神分析を行う中で、患者の多くが過去ではなく、今現在の自分を語りたがることに気が付き、同時にそのような認知、思考が患者の感情に密接に関係していることに気づいた。「認知が感情を引き起こし、レジリエンスのある人、ない人の違いにおいて重要であるのは感情であると気付いた。やがてベックは、患者が抑うつや不安に打ち勝つために自分の思考を変えるための認知療法を考案した。

ある患者はベックにこう言った。「精神分析療法は、事故で傷ついた患者に、傷の状態を説明するばかりで何もしてくれなかった、転んでいる自分を起こしてさえくれなかった。もう自分がどれほど傷ついているかは知りたくもなかった。自分を治す手助けをしてくれる人を探しているのだ。」「先生もおそらく失敗するだろうから、早く失敗してくれれば金もかからなくて済む。」と。認知療法では、クライアントの不正確な認知、信念体系や思考にも取り組んでいき、クライアントが出来るだけ早く普通の状態に戻れるようなスキルを身につけされることに重点が置かれた。「今ここにある」ことに意識を集中させ、子供時代の話には戻らない。認知療法は人が自分の人生をより良いものに変えられる能力について楽観的である。

そしてそれは実証されポスト・フロイト派の楽観主義が正当化された。「人は正しいツールさえ見つかれば、自分の人生に真の変化をもたらすことが出来る。」「それには、自分の信念体系や思考・感情において、本当に大切なものは何かということに意識を向けることが大事である。」

認知治療法は「思考や感情こそが人間の核心であり、本質的な人間性を象徴するものだ。」ということを確信させた。

認知療法のスキルはレジリエンス心理学の7つのスキルの根底を成している。       

  1. 正確な思考がカギになる

認知療法の理論家にとって精神的に健康である人のお手本は「自分の強みと弱みを正確に査定でき、リスクとその結果を正確に判断でき、問題の真の原因を正確に特定でき、自己と他者を正確に評価できる人物」とされてきた。また「人は通常、科学者と同じように、無策為な方法でデータを収集し、理論的な方法でデータを統合してから、正確かつ経験的に支持される結論を出すものだ」と主張して来た。

しかし現実の人間は、いい加減な認知であり「たいてい自分にとって好ましい仮説を支持するような解釈をするようなデータを集め処理をする」「科学者どころか、自分の既存の信念に最も都合の良いデータをねつ造するペテン師のようなもの」である。

心理学者のあるものは、正確さや現実主義の重要性をもう一度見直し、「精神的健康状態における正確さの意義」について指摘するものが現れた。彼らは「人は多くの場合に、<ポジティブな幻想>を引き起こす形で世界に対応している」と主張している。

ポジティブな幻想とは、非現実的なほどポジティブな自己評価や誇張された制御感、非現実的な楽観を引き起こすような、普遍的かつ永続的な勘違いや偏見(バイアス)の型のことだ。

テーラーとブラウンは、ほとんどの人がポジティブかネガティブかの評価においては常に大きくポジティブ側に偏重して自分を認識しているものだとしている。しかしそのこうした幻想が実際に精神的健康を改善する可能性があるとも指摘している。

「健康な人ほど、環境に対して自分が持つ制御力を過大評価しがちであり、自分自身を過度にポジティブに見がちであり、未来について非現実的なほど楽観的になりがちである」と主張している。

しかしPRP〈ペンシルベニア レジリエンス プログラム〉のレジリエンスに関する膨大な研究データは、楽観的な幻想(非現実的な楽観)には危険性があり、現実的な楽観には利点があることを示している。

非現実的な楽観はストレスに対して抵抗が弱い。ネガティブな感情を抑制しポジティブな感情のみに意識を向ける人は、より現実的で自分のネガティブな感情を受け入れている人に比べ、ストレスに対する生理的反応が強い。

現実的な楽観とは、現実を否定することなくポジティブなものの見方が出来ることであり、ネガティブな側面を無視せずに状況のポジティブな側面を積極的に認めることである。

現実的な楽観とは、良いことが自動的に起きるとは想定しない。良いことが起きるかもしれないし、それを追及する価値があるが、そうした良い結果をもたらすには、努力や問題解決、計画が必要であるという信念なのだ。

4.人間の強みに再び意識を向ける

認知療法は、抑うつに「打ち勝つレジリエンス」と「乗り切るレジリエンス」また「立ち直るレジリエンス」を会得させることが出来たが、それ以上の「自分のすべての毛穴を血流で満たし、自分の車輪を全開にして、走らせること」は出来なかった。溝から出し歩けるまでは出来たが、走らせるまでには至らなかったのだ。レジリエンスは「働きかける」要素が含まれているので、「走らせる」ことができる。

心理学の新たな使命は、働きかけること

米国の戦前の心理学は「並外れた才能の育成」と「あらゆる人の人生の満足感と充実感の促進」を使命にしていたが、戦後は退役軍人のケアと精神疾患の研究に膨大な予算がつき、心理学はネガティブな側面に取り組むことになった。1998年にセリグマンが米国心理学会会長になると、今や戦後の復興が終わり、経済的にもかつてない繁栄が訪れたのだから、心理学は「治療の先」を見るべきであるとのメッセージを発し、間もなく「人間の強み」や「市民道徳」を関係づけた「ポジティブ心理学」が誕生した。

 

ポジティブ心理学は「最適な人間の機能に関する実証的な知識体系を構築する」ことを目的にし、人間の強みに対する理解を広め、弱みの修正だけではなく、強みを築くためにデザインされた効果的なプログラムや介入に対しての知識を吹き込むことである。

 

認知療法はマイナスからゼロになるように目盛りを動かしたが、うまくプラスにまで目盛りを動かすには「働きかける」レジリエンスが必要である。

 

レジリエンスは基本的な人間の強みであり、人間の感情的・心理的構想におけるすべてのポジティブな特徴の基礎をなすものだと言える。レジリエンスの欠如はネガティブな機能の主要な要因である。

 

思考スタイルはその人のレジリエンスを決定し、レジリエンスはその人が人生でどれくらいうまくやれるかを決定する。思考スタイルを修正する介入方法を開発できれば人のレジリエンスを増大させ世界でのパフォーマンスを改善することが可能になる。

 

これがここでここから述べていく7つのスキルの前提条件になっている。